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各学年の研究授業とその事前研・事後研を実施するだけでも大変な労力を要するときに、全校体制で学級経営に関する研修を行うことは難しいでしょう。そこで、まずは最低限、夏休みに2時間ほどの学級マネジメント研修を実施してみてはいかがでしょうか。そうして、少しずつ回数を増やし、どこかの学年で学級力向上プロジェクトを特別活動や総合的な学習の時間の研究授業として実施したり、若手教員の学級力向上プロジェクトの成果報告会を2学期に入れたりするなどの工夫をしてほしいと思います。
可能であれば、主幹や研究主任などのミドルリーダーが若手教員を集めた自主勉強会を隔月で30分ほど開いて、学級マネジメントの状況に関する情報交換会を設けることができれば理想的です。
さらに研修が充実してくれば、学級マネジメント力レーダーチャートを持ち寄って若手教員が報告会をする全校研修を設定したり、学年会で若手教員の報告を受けてアドバイスをする会を実施したりしてもよいでしょう。
大切なことは、校内研修あるいは研究授業のテーマを、教員の教科の授業力向上に限定したり重点を置きすぎたりすることなく、車の両輪のようにして、子どもたちには学力と学級力をともに育て、また教員には授業力と学級マネジメント力をともに高めるような授業づくりや教員研修をバランスよく実施することです。
具体的には,次のような3つのタイプの校内研修が効果的ですので、参考図書『若手教員の学級マネジメント力が伸びる!』(金子書房)を参考にして、実施してみてください。
【学級マネジメント研修の3つのタイプ】
① 学級力向上プロジェクト報告会
[ねらい]各学級で取り組んでいる学級力向上プロジェクトの途中経過や成果と課題を報告し合い、学級力レーダーチャートや授業記録写真などを見ながら取組例の学び合いやアドバイスにつなげる。
[準備物]・学級力レーダーチャートのコピーまたは画像データ
・実践の様子や掲示物、子どもの作品などの写真やコピー
・できれば液晶プロジェクタとノートパソコン
[手 順]各学級担任がパワーポイントで事例報告をした後で、付箋を使ってポイントを画用紙に貼り、学び合いやアドバイスをする。
[留意点]まず校内の若手教員に呼びかけて行い、少しずつ全学級での報告ができるように積み上げていく。研修の様子を、学校ウェブサイトや学校便りで発信すると保護者や地域の協力や賛同を得やすい。時間的にゆとりがある夏季研修として実施すると、教員間の豊かなコミュニケーションにつながる。
② 学級経営カリキュラム作成研修
[ねらい]年間を通した意図的・計画的なスマイル・アクションを学級担任と子どもたちが協力して進めることができるように、学年単位でグループを構成し、子どもが使うアクションカードを活用して学級経営カリキュラム・プランを作成するワークショップを行う。
[準備物]・カラー印刷したアクションカード数セット
・四つ切り画用紙(グループ数分)
・のり、はさみ、定規、水性マジック
・できれば学級力マンガを教員数分用意しておく
[手 順]まず、学級力マンガを読んで学級力向上プロジェクトの進め方の概要をつかんでおく。自分の学年や学級での一年間の主な学校行事や総合的な学習の時間のプロジェクト、主要教科の主な学習活動を想定しながら、アクションカードをはさみで一つひとつ切り離して、四つ切り画用紙の上に月と教科、領域、行事などを交差させて描いたマトリクスのセルの中に貼り付けていく。完成した学級経営カリキュラム・プランを、グループ毎に発表してアドバイスをもらい、その年度の計画的なスマイル・アクションの実施の概要を学年団で共有する。
[留意点]あくまでも研修でのプランづくりであることを念頭において、作成したアクションカードの系列をそのまま各学級で強制的に実施するわけではないことを確認する。各学年の子どもの発達段階や行事の事前事後指導、特別活動と道徳科の関連づけなどを意識してプランづくりをするように意識する。また、学級力アンケートとスマイルタイム(話し合い活動)を実施するタイミングを忘れないように赤字で記入するようにする。
③ 学級マネジメント力向上研修
[ねらい]学級担任向けの学級マネジメント力レーダーチャートを用いて、それぞれの学級担任の学級マネジメントの状況を報告し合い、その後の学級経営のあり方について具体的にチェックリストの指標に基づきながらアドバイスを交流し合うことを通して、学級マネジメント力の向上につなげる。
[準備物]・学級マネジメント力レーダーチャート
・学級マネジメント力項目別スコア表
・学級マネジメント力活用レポート(4章で紹介された様式を参考にするとよい)
・学級力レーダーチャート
[手 順]漠然とレーダーチャートをみて気づいたことを交流し合うのではなく、学級マネジメント力チェックリストの領域や項目に沿って成果と課題、得意と苦手などの側面から分析的にみるようにする。複数回のチェックを通して、学期を経る毎にどのような成長や停滞が見られるかを、素直に診断し改善策を協働的に生み出すような対話を活性化するように配慮したい。
[留意点]会の持ち方としては、有志の会、校長塾、学年会、全校研修など様々なタイプが可能である。レーダーチャートの大きさや形にとらわれることなく、気軽に参加し、リラックスした雰囲気の中で貴重なアドバイスをもらえるといった意識が生まれるようにしたい。少しずつ学び合いの輪を広げ、全学級担任の報告にまではいかなくても、全校研修で教職経験を超えてアドバイスの交流ができる開かれた学級づくりや力量形成が行われる研修会運営を心がけるようにする。
〒240-8501 神奈川県横浜市保土ケ谷区常盤台79-2 横浜国立大学藤原寿幸研究室 TEL:045-339-3392
関東学級力向上研究会では、これから学級力に関わる研究成果をこのウェブサイトから発信して参ります。 少しずつ更新します。
どうぞよろしくお願い申し上げます。 |