私たちの研究会では、子どものための学級力アンケートと並行して、若手教員のための学級マネジメント力・チェックリストという新しい自己診断ツールも提供しています。
若手教員がますます増えている今日、若手教員の学級経営力の向上はどの学校でも大きな課題となっています。もちろん、校内OUTの取組はなされていると思いますが、それを一層効果的にするためには、若手教員が主体的に自分の学級経営力を自己診断・自己評価する、いわば、「学級経営力可視化ツール」が必要になるのです。
それが、学級マネジメント力・チェックリストという、6領域54項目からなる、若手教員のためのアンケート用紙なのです。各小領域の名称は、以下の通りです。
A.やりぬく力を育てる
A−1 目標を決めて達成させる
A−2 自律性・主体性を育てる
A−3 ルールや行動規範を守らせる
B.つながる心を育てる
B−1 認め合いと安心のある関係づくり
B−2 対話力を育てる
B−3 協調し関係を修復する力を育てる
C.肯定的な働きかけ
C−1 ほめて育てる
C−2 豊かなコミュニケーション
C−3 公平・公正に接する
D.みとりを生かす指導
D−1 子どもの深いみとりと対応
D−2 一人ひとりのよさを生かす
D−3 共感的な理解と交流
E.自律的な指導
E−1 自己コントロール
E−2 心に響く語りかけ
E−3 環境整備と率先垂範
F.計画的で冷静な対応
F−1 計画的な学級づくり
F−2 迅速で冷静なトラブル対応
F−3 組織的な課題対応
図1 学級マネジメント力・チェックリストの1ページ目
このアンケートを学期に1回ずつ定期的につけていき、結果を専用のプログラムを使ってレーダーチャートにして可視化すれば、若手教員が自分の学級経営力を簡単に、そして多面的・多角的に自己診断できるようになるのです。各学期の結果は、レーダーチャートの上に異なる色で重ねて表示されますから、どの領域やどの項目で、学級マネジメント力が伸びたのかがすぐにわかるようになっています。
図2 学級マネジメント力・レーダーチャートの例
また、子どものための学級力アンケートと若手教員のための学級マネジメント力・チェックリストを並行してつけていき、両者を比較して診断・評価していくと、子どもの学級力の結果にしっかりと対応して、自分の学級マネジメント力を高めていっているかどうかが、すぐにわかります。そのことで、子どもたちと学級担任か連携・協働しながら学級づくりをしていくことが可能になるのです。もちろん、学級の子どもたちに学級マネジメント力・チェックリストの結果を見せる必要は必ずしもありません。
この学級マネジメント力・チェックリストの結果は、若手教員が一人で診断・評価するためにも使えますが、できれば学年会や夏季研修会で他の先生方と共有してアドバイスをもらったり、OJT担当の先生や管理職にも気軽に見てもらい、継続的なアドバイスをもらうことも可能です。若手教員の学級経営の状況が可視化されているため、他の先生方も的確で具体的なアドバイスが可能になるというメリットがあります。
写真1 学年会でレーダーチャートを出し合い若手教員にアドバイスをしている様子
学級経営については、周りの先生方も、経験則が多すぎるため、また若手教員の学級の様子も外からでは見えにくいため、アドバイスも抽象的になりがちですが、こうした学級力アンケートと学級マネジメント力・チェックリストの2つの結果があることによって、アドバイスも具体的になり、若手教員とのコミュニケーションが取りやすくなり、学年全体で、あるいは、学校全体で若手教員の成長を支えているという環境を構成することができるようになるのです。
できれば、学校の校長がリーダーシップを発揮して、今大きな課題となっている、校内での若手支援という課題に、この学級マネジメント力・チェックリストを活用して、協働的・継続的に取り組むことを、学校経営の一つの柱に位置づけていただければ幸いです。
若手が育つ学校、若手を育てる学校!
こうした生き生きとした学校づくりが、今、校長先生のリーダーシップにかかっているといえます。学級マネジメント力・チェックリストをそのために、ご活用ください。
チェックリストの詳しい活用方法や、学級マネジメント力・チェックリストを用いた若手教員の学級経営奮闘記、さらに校内ミドルリーダーや校長による若手支援の具体例などについては、『若手教員の学級マネジメント力が伸びる!』という書籍を出していますので、参考にしてください。また、この書籍からは、学級マネジメント力・チェックリストやレーダーチャート作成プログラムがダウンロードできます。
この学級マネジメント力・チェックリストを定期的につけて診断・評価していくと、若手教員自身が、自分の学級経営力をエビデンスに基づいて可視化し、意図的・計画的に学級づくりのあり方を改善していくことができるようになります。また、周りの先生方も定期的に若手教員とデータに基づいて学級経営のあり方をサポートしていきますので、学級の崩壊や学級の荒れを未然に防止し、学級づくりを楽しみながら進めていくことができるようになるでしょう。
若手教員の支援ツールとして、学級マネジメント力・チェックリストをお薦めします。