学級力を高め、いじめ防止につながる新しい学級経営の手法を紹介

関東学級力向上研究会
関東学級力向上研究会は、子どもたちが協力して学級力を高める学級づくりを普及することを目的とする研究会です。アクティブ・ラーニングとしての新しい学級経営の手法を共に開発していきましょう。
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横浜国立大学藤原寿幸研究室
  

子どもに評価力が付いてきて評価が厳しくなると、レーダーチャートが小さくなって困っています。どうすればいいでしょうか?

 確かに、子どもたちは4月当初の新しいクラスでは様子見であることと、少し意識が低いままに適当にアンケートの得点を高く付けてしまう傾向があります。そのため、何回か学級力アンケートを付けてレーダーチャート診断をしていると、少しずつ自己評価力や原因を分析して考える力、学級のことを考えて真剣に取り組む態度等が伸びてきて、それにつれて子どもたちは厳しい評価をするようになります。つまり、学級力レーダーチャートが、学級の実態が悪くなっているわけではないのに、学年途中で小さくなってしまうときがあります。そのような時には、学級担任から、「この項目は低くなっているけど、どうかな?」「みんなが真剣に考え出して厳しく評価を付けたからだと思うよ」というように、子どもたちを安心させる言葉かけをしてあげてください。必要以上に、子どもたちががっかりしないような配慮が必要です。ただし、それは、子どもたちを甘やかすことであってはいけませんから、子どもたちも納得できる理由や状況の変化があってレーダーチャートが小さくなっているときには、しっかりと原因を考えて改善策を提案させるようにしてください。「子ども主体」といっても、こうした大きな方向付けをしたり、データの解釈を適切にできるようにするための学級担任の配慮は必要なのです。
 

子どもたちに、学級力が伸びるアクティビティーを考えさせているのですが、なかなか子どもだけではいいアイデアが出てきません。

 学級力向上プロジェクトでは、「子ども主体」が原則ですので、そうやって、学級力が伸びるアクティビティー(スマイルアクションと呼びます)を、子どもたちに話合わせて出してもらうことはとてもよいことですね。自分たちで決めたことは(自己決定の原則)、自分たちで実践・実行しようという意欲につながっていきます。しかし、子どもたちだけで効果的なスマイルアクションを次々と考え出していくということは現実的には難しいことです。関連書籍として紹介した本(『学級力向上プロジェクト』など)には、多くのスマイルアクションが紹介されていますが、あくまでもそれらは教師向けです。そこで、子どもたちが効果が出るスマイルアクションを主体的に考え出せるようにするには、次のような方法を試してみてください。きっと、少しずつ効果が表れてくることでしょう。
 ① スマイルアクションを子ども向けにイラストにして描いたアクションカードを36枚用意しています。小学校版と中学校版がありますので、学年に応じて使ってください(関連書籍『学級力向上プロジェクト3』などにダウンロード可能なパスワードなどが掲載されています)。パワーポイントのファイルで提供していますので、その中から時期に合わせて5枚程度を選んで子どもたちに印刷して渡し、「来月にはどのスマイルアクションをするとよいか班で考えて提案しよう」というめあてで話合わせてみましょう。 全く0から考えることはできなくても、効果的なスマイルアクションを選ぶのであれば(自己選択の原則)、子どもたちにとってそれほど難しくはなく、また、自分たちで考えたという感覚が持てるため実践意欲も高まってきます。
 
② 例えば、1学期には学級担任から意図的・計画的にいくつかのスマイルアクションを提案して実施し、2学期にはその中からもう一度やってみると効果的なスマイルアクションは何だろう?と問いかけて、子どもたちに決定してもらうという方法も効果的です。一年間の流れの中で、徐々に、教師提案から子ども提案へと、スマイルアクションの決定権を渡していくようにするとよいでしょう。子どもたちの自立を少しずつ促し、自己決定のモデルを示してそれを少しずつ外していくのです。ちょうど、自転車に乗るときに、初めは補助輪を2本付けていても、乗れるようになってくると1本ずつ外していくのと同じことなのです。
③ 学年にもよりますが、3学期くらいになると、既製のアクションカードを参考にして、「自分たちでもアクションカードを描いてみよう!」というめあてを出して、子どもたちにアクションカードを提案してもらってもいいでしょう。最初は、元のカードと同じようなカードを描くことも多いのですが、2回、3回と続けていくと、オリジナリティーのあるカードが書けるようになってきます。少し時間をかけて、成長を待つという姿勢で臨んでみてはいかがでしょうか? オリジナルカードは、ぜひ教室に掲示して、3学期のスマイルアクションを子どもたち自身で考えられたことに誇りを感じられるようにしてください。
 

子どもたちは、スマイルアクションを決めてから1週間程度は意欲的に取り組んでいますが長続きしません。どうすればいいでしょうか?

 学級力向上プロジェクトでは、「よりよい学級を作ろう!」という子どもたちの意識を高めて持続させることが(意識化の原則)、もっとも大切です。しかし必ずしも、2,3週間何もしなくても意識が継続していくと・・・続きを読む
 

子ども主体の学級づくりというコンセプトには共感していますが、学級担任からはスマイルアクションを提案してはいけないのでしょうか?

 いけないことはありません。学級力向上プロジェクトがいかに子ども主体の学級づくりであるとはいえ、子どもたちをやる気にさせるのも、プロジェクトの開始を提案するのも、学級力アンケートをやろうと促すのも学級担任なのですから。教師がスマイルアクションを提案するときには、次のような3つの方法がありますので、タイミングをはかってやってみてください。大切なことは、教師と子どもたちが一緒になって学級づくりに取り組んで行くことなのです。
① アクションカードを子どもたちに配るときに、季節性(どんな行事があるか)や難易度を考えながら5枚程度を教師が選んでおいて構いません。班でその中から1枚を選ばせて理由を言わせていくと、結局すべてのカードが選ばれてきます。子どもたちは自己決定したという満足感を感じながらも、教師が描いた大きな方向性の中で安心してプロジェクトを進めることができます。
② 「先生提案」という形で、こんなアクションをやってみよう!と学期に一度くらいは子どもたちに提案してみてもいいのではないでしょうか。その場合には、先生の特技や個性を生かす方がいいでしょう。例えば、音楽が得意な先生なら「学級力の歌をみんなで替え歌にして歌う」とか、絵が好きな先生なら「学級旗をみんなで作る」とか、ガーデニングが得意な先生なら「学校を花でいっぱいにしよう」などはいかがでしょうか? 先生が楽しければ、子どもたちも楽しくなってくるはずです。
③ 3学期くらいになると、アクションカードを子どもたちに自作させることもできるようになります。「アクションカードを自作してオリジナル・アクションに取り組もう!」と提案してみるのはいかがでしょうか?
 

学級力アンケートは、子どもたちの意識や願いを集中させやすいので効果的なのですが、年間に何回くらい実施するといいでしょうか?

 特に決まってはいませんが、多すぎても新鮮味が薄れてマンネリになりますし、少なすぎると成長や課題の克服プロセスが見えにくくなり、子どもたちの自己効力感も高まりません。一概に何回とは言えませんが、お薦めしているのは、学期に2回ほどアンケートを実施してその間の取組(スマイルアクション)の効果を見てみるのがいいでしょう。3学期は期間も短いので、年度末に1回程度、一年間の成果を見て次の学年への課題を見通すくらいがいいでしょう。
 

学級力アンケートを継続して実施しているのですが、学年が一つ上がると、「また同じアンケート?」と子どもたちがマンネリ気味です。

 確かに、一年間にすでに5回程度のアンケートをするわけですから、マンネリになるリスクはあります。子ども主体の学級づくりなのですから、子どもたちの意欲が低下することはなんとしても避けたいですね。そのためには、大きく二つの方法があります。一つめは、学年に応じた数種類の学級力アンケートを用意していますから、例えば、小学校6年生特別版アンケートや、中学校3年生特別版アンケートを忘れずに使うようにするとよいでしょう。関連書籍で紹介した『学級力向上プロジェクト3』から、そうした特別版アンケートのファイルとレーダーチャート作成ソフトがダウンロード可能になっていますので、どうぞご活用ください。二つめの方法は、子どもたちにアンケート項目をいくつか作らせて、オリジナル版のアンケート項目と差し替えてみることです。子どもたちの意欲が一段と高まるのを感じることでしょう。その場合には、あわせて、レーダーチャートの方も書き換えておいてください。プロテクトはかけていませんのですぐに書き換えられます。3つから4つ程度の項目を差し替えても、特に問題はありません。あまり多くの項目を入れ換えると、統計的な信頼性は保証できませんので、ご注意ください。
 

学級力レーダーチャートが小さくなったときには、子どもたちに見せないという判断をしてもいいのでしょうか?

 いろいろな要因でレーダーチャートが小さくなることがありますので、次のような場合に当てはまる場合には、レーダーチャートを子どもたちに見せないという判断が必要になります。あるいは、学級力アンケートを取らないということも必要です。慎重に進めてくださることを、お願いいたします。ただし、特に配慮が必要な大きなトラブルがない場合には、低くなることや小さくなることも、子どもたちに前向きに反省して課題を解決しながら努力する力を育てて欲しいのです。担任の方があまり深刻にとらえたり、低くなったことをしかったりしてはいけません。
・転入生が入ってきたとき
・子どもたちの間でトラブルがあったとき
・担任の笑顔が出にくいとき(小学校低学年の場合)、など
 

学級力は、アンケート結果を子どもに見せて考えさせるというところに魅力がありますが、保護者にも見せているクラスがあり迷っています。

 あまり無理せずゆっくり進めてください。まずは、「学年で歩調を合わせながら」、です。保護者は心配することもありますが、応援団になってくれることもあります。ですから、無理して第1回レーダーチャートから保護者に見せる必要はありません。子どもたちの頑張りで少しずつレーダーチャートが大きくなり始める、6月ころや2学期からでも構いません。少しレーダーチャートが大きくなってから、という判断で構いません。ただし、多くの場合で、学級力レーダーチャートは教室に貼って子どもたちの継続的な意識化を促しますから、参観日などで保護者が見る機会が徐々に増えてくるようになります。ともかく、保護者には、「この先生はいじめ防止の取組をやってくれて安心だ」とか、「はがき新聞でみんなのほめほめ活動をやってくれていてうれしい」、「最近学校に行くのが楽しそうだが、こんな取組をやってくれていたんだ」といった、前向きな気持ちで学級力向上プロジェクトの応援団になってもらえるような時期を選びながら、無理なく開示していきましょう。保護者会などで取組の意義を説明しておくと、レーダーチャートが少し小さくなっても、応援してくれることは少なくありません。保護者に認められて喜んでもらえるプロジェクトにしたいものですね。
 

研究主任です。校内で学級力向上プロジェクトを広げたいと思っていますが、教職員の意識を高める上で効果的な研修方法はないでしょうか?

 あります。関連書籍で紹介した『若手教員の学級マネジメント力が伸びる!』金子書房、という本に、校内研修のいろいろな取組例が掲載されていますので、ぜひ参考にしてみてください。
 

校長です。学校経営の方針として、全クラスで学級力向上プロジェクトに取り組んで行こうと思います。若手支援のアイデアはないでしょうか?

 上記と同様に、『若手教員の学級マネジメント力が伸びる』金子書房、という本からは、若手教員につけてもらう「学級マネジメントチェックリスト」という、教師が自身の学級経営力を学期に一度振り返るためのアンケート用紙がダウンロードできます。その結果は、学級マネジメント・レーダーチャートとして描き出すことができます。若手教員にそうした自己研修ツールを活用してもらい、レーダーチャートを学期に一度でいいですから、学年会や夏季校内研修会などで先輩の先生方に見てもらい、前向きなアドバイスを得られるようにするとよいでしょう。多くの事例で、学級経営力に課題のある若手教員が、一年間、このチェックリストとレーダーチャートを用いて、なんとか学級崩壊にならずに、保護者の信頼をつなぎとめていったという素晴らしい事例が多く報告されています。ぜひ、本書にある、そうした若手教員が描いた学級経営の奮闘記も合わせてお読みください。



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